カタ「る映画への」オモイ

毎月定期的に大阪で開催される映画を語る会の記録ページです。

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3月27日ワイルドバンチ開催会で語られた映画

どですかでん

黒澤映画初のカラー作品。約1万坪のゴミ捨て場にオープンセットを組んで撮影された。「どですかでん」とは、作中に登場する自分が路面電車の運転手だと思い込んでいる青年が、電車の音を表現する擬音。浮気性の妻が外で作ってきた子供を次々に自分の子として扶養する男。廃車に住む乞食の親子の夢想話。いつの間にか組み合わせが変わる二組の夫婦など、スラム街に暮らすおかしな人々の生活をポップに描く。おかしなことを言う人。それを見て見ぬ振りする人。わざわざそれを指摘する人。みんながそれぞれ互いに「おかしな人だ」と思っている、と鋭い洞察がある。

 

劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』

ポケットモンスター』劇場版第1作目である。知能の高い幻のポケモン、ミュウの遺伝子を使い作られたコピー、人語をも使いこなすミューツーは自分を産み出した世界を恨み、コピーである自分たちがオリジナルよりも優れていると証明するために、オリジナルたちに戦いを挑む。市村正親さまがミューツーの声である。その声で打つ、自らの存在証明を問う名演説はヤバい。生命とは、存在とは何かを問う、小学生向けと舐めたらあかん一本。

 

『YUKIGUNI』

92歳の井山計一は今なお日本最高峰のバーテンダーである。彼を捉えたドキュメンタリー映画山形県酒井市のバーで働く彼のもとへは全国からカクテルファンが訪れる。彼が昭和34年に全日本ホーム・カクテル・コンクールでグランプリを獲得した、今やスタンダードカクテルとして知られるようになった「雪国」。今回の「カタオモイ」の場では、このドキュメンタリー映画の話からどんどんズレていき、語り手が通うバーの話になっていた。いつの間にか山形のバーが大阪のバーの話に変わっていたのである。「カタオモイ」の語りは宇宙だ(こういうの楽しいからもっとやってほしい)。

 

『オリバー/ニューヨーク子猫ものがたり』

ディズニーの長編アニメミュージカル映画。吹き替え版の松崎しげる尾崎亜美、そして木の実ナナのミュージカルショーと言っても過言ではない。参加者のひとりが「尾崎亜美! マジで!」となり盛り上がる。原作のチャールズ・ディケンズの小説『オリバー・ツイスト』を、舞台を現代(1980年代)のニューヨークに、子猫や犬を主人公にするなど大胆に翻案。松崎しげる演じる野良犬が歌う『ホワイ・シュッド・アイ・ウォリー?』は必聴。
https://www.youtube.com/watch?v=ok8Kw0sW7Wo

 

『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』

「創業者」レイ・クロックが、マクドナルドを世界最大のファーストチェーンに成長させる姿を描いた伝記映画。マクドナルド兄弟が経営するドライブインレストランがいかに優れていたかを説明するだけの件すらも映像的にスタイリッシュに見せる。チョークでテニスコートに仮の持ち場を書き、従業員を実際に動かし、手探りで、一番効率のよい調理場を探っていく間取りオタにはたまらない演出で、観客を厭きさせない。レイ・クロックの行動原理が、実はキリスト教プロテスタントの神父の説法、現在で言う自己啓発だったなどをさり気なく示していたりと、アメリカ資本主義の本質に迫った映画である。そう思って観ると、このレイ・クロックのセリフは味わい深い。「もしも、川でライバルが溺れていたら、口にホース を突っ込んでやれ」 。

 

キャプテン・マーベル

マーベル・シネマティック・ユニバース』第21作目の映画。新卒で入った会社に異様に適用してしまったキャロル・ダンヴァースさんは、上司のセクハラ等をわりかしうまく去なしているが、という嘘紹介もあながち嘘とは言いきれない。ダンヴァースさんは物語開始時にクリー星の首都「ハラ」にいるのだから。これは間違いなくセク「ハラ」を暗示。むむむ。女だらけの島から脱出して世間知らずのまま恋をしたりはしない。それは違う映画だ。差別する人を怪物化する印象操作だったり、虐げられた女性の話だったりと、現代社会に通じる。ダンヴァースさんが楽しけりゃそれでいいよ。それでいいんだよ。

3月16日ワイルドバンチ開催会で語られた映画

『アノマリサ』

エターナル・サンシャイン』『マルコヴィッチの穴』脚本家チャーリー・カウフマン監督・脚本。ストップモーションアニメーションで自分以外すべての、大人も子どもも男も女も関係なく、同じ声、同じ顔に見える中年男性が「皆とは違う女性」と出会う話。人間生理を逆撫でするストーリーと登場人物たちが作り物(人形アニメ)であることが相乗効果を生んでいる。90分に纏まっているのも魅力。

 

『カフェ・オ・レ』

マチュー・カソヴィッツの長編デビュー作、異人種間の三角関係を軽いタッチで描くラヴ・コメディ。マチュー・カソヴィッツ演じる貧乏なユダヤ人は黒人女子学生と付き合っている。しかし彼女にはもうひとり黒人のエリートの恋人がいた。そして彼女の妊娠が発覚、どちらの子どもなのかわからないまま協力して生活することに。複数の宗教、人種がまじりあうフランスをまさに映像で歯切れよく語っている。

 

ジュラシックワールド』『ジュラシック・ワールド / 炎の王国』『キングコング: 髑髏島の巨神』

恐竜映画にはロストワールドものというジャンルがある。例えば人類の未知の場所へ乗り込む『キングコング: 髑髏島の巨神』がそうだ。その中でも『ジュラシック・パーク』シリーズは人類の手でロストワールドを作るという点が特筆すべき点だろう。『ジュラシック・ワールド』シリーズの挑戦はさらに一歩進んでいる。恐竜映画から怪獣映画への移行だ。『ジュラシックワールド』は人間社会から隔離された恐竜のテリトリーを人間が生みだす恐竜映画である。『ジュラシック・ワールド / 炎の王国』は、恐竜が人間社会にとって排除(駆除)すべき怪獣になる過程の半怪獣映画である。

 

『南部の唄』

ディズニーパークのアトラクション、スプラッシュ・マウンテンのモデルとなった映画。南部の農場主へやってきた白人少年が、農場の下働きの黒人のオジさんのおとぎ話を聞く実写パートと、ブレア・ラビットが意地悪なブレア・フォックスたちを知恵でやり込めるアニメーションパートの融合。ウサギが意地悪なキツネをやり込める構造は『ズートピア』と対をなすのではなどの指摘あり。白人と黒人が交流をするのはこの作品当時の時代背景から考えてありえず、間違った歴史認識を与える可能性があるとの理由から現在は廃盤。

 

『王国(あるいはその家について)』


この映画は、リハーサルの場面を使いフィクションを形成している特異な映画だ。この映画の目的は「役者が役になる過程をカメラに収めること」である。リハーサルの、台本の読み合わせを繰り返す過程、役者のからだに言葉が入り、声ができあがり、登場人物同士の関係性ができる過程で物語を語る。役者のちょっとした言葉のニュアンスや衣装、位置関係が、試行錯誤ゆえに揺らぐ。すると本来語られるべき物語とは別の可能性を立ち上がりそうになる。まったく新しい種類のサスペンスを持った映画。

2月20日ワイルドバンチ開催会で語られた映画

アントマン


話者曰く『放射能X』から連綿と続く怪獣映画だそうだ。その文脈から観ると、この映画の主人公はハンクピムであり、「奥さんを奪った」アメリカに対する彼の復讐の物語である。この映画に登場する怪獣“も”蟻だ。この映画に登場する蟻はすべてアメリカにとって外来種だ。彼が用いる戦車ストラップもソ連製である。今作でアントマンになるスコット・ラングの相棒になる蟻「Carpenter ant」は字幕では、アメリカの蟻になっているが、本来は日本のクロオオアリのこと。

アントマン&ワスプ


最後にドライブインシアターで上映されるのは『放射能X』。カモメに蟻を喰わせても悲しまないので、蟻に対する愛情が感じられないのが残念。量子世界に突撃していくシーンはもうまんま『ミクロの決死圏』。アントマンが中途半端に巨大化し、海から現れるのは『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』!

 

ジョン・ウィック』『ジョン・ウィック2』


アクションがスゴいと語られがちだが、アクション抜きでもスゴい。暗殺者ギルドは、命のやり取りを生業にしているからこそ、厳しい規律が存在している。同業者から恐れられる「依頼された殺しは絶対やり遂げる」執念で、暗殺者ギルドにおいて絶対の信頼を勝ち取ってきたジョン・ウィックは、死んだ奥さんへの愛という自分も他人も巻き込む爆弾を抱えている。もしかしたらこれはワークライフバランスについての映画なのではないか? 暗殺者ギルドの関係者とジョン・ウィックの粋なやり取りも魅力。

 

イコライザー


元凄腕CIAエージェントのロバート・マッコールさんが、CIA職員の若い職員を助けたり、太ってる男の子の特訓に付き合ったり、目についた困っている人を助ける心暖まる話。ま、助ける過程で「殺人マシン」になって悪の組織を皆殺しにしたりもするけれども。

 

わたしたちの家


新しい恋人と結婚すると母が言い出したことで、いなくなった父親と向き合わざるえなくなった娘の生活と、過去を持たない女と過去に拘る女のルームシェアが、同じひとつの家で展開される不思議な話。よく観るとこの娘の葛藤がもうひとつの世界のふたりの行動にリンクしている。実はピクサー映画の『インサイド・ヘッド』と同じ構造では?

 

15時17分、パリ行き


映画は、シーン(場面)の纏まりだ。この映画には「何観せられてんだ」と思えてくる旅行シーンがある。早まってはいけない。このシーンもある英雄行為に至る道のりに必要なのだ。主人公たちの人生はその時々で見れば失敗で無意味に見える。しかし無意味思えた失敗があったから英雄行為が可能だったのだ、という運命論的因果律の物語がめっちゃ宗教大国アメリカっぽい件。

2月16日ワイルドバンチ開催会で語られた映画

『マスカレード・ホテル』

キムタクの圧倒的王子力。彼がスクリーンの中でひざまずいた瞬間、劇場に爽やかな一陣の風が吹き抜けた。これが4D……(うっとり)。

『リラクタント・ドラゴン』
ディズニーのアニメーション制作のお仕事見学物。ダンボに音つけているシーンとか見れる。実写からアニメへ、モノクロからカラーへ、お得な一本。現在ビデオが高価で取引されており見るのは難しい。

アンビリーバブル・トゥルース


80年代のレーガン的(ビリーバブルな)価値観へのアンチテーゼ。レーガンの次女パティは、94年にヌードになったり反核運動に加わったり、映画の主人公のオードリーと妙にリンクしてる。

 

『アリーキャット』


とにかく窪塚がいいのだ。圧倒的に窪塚なのだ。降谷いいや窪塚だ。圧倒的窪塚なのだ。

 

LEGO(R)バットマン:ザ・ムービー<ヒーロー大集合>』


良作にも関わらず埋もれている不遇の一作。実は、多くのDCキャラクターが登場し、シリーズが進んでしまったDC映画の入り口としては最適なのである。サメも出るよ!

 

『ナイト・オブ・ファンタジー 次元を超えた冒険』


期待感ゼロが覆されるまさかの病に倒れた老音楽家の夢と妄想のファンタジー。ヘビメタが印象的。点と点があまりにも点すぎるという不安はあるが、何も考えずに観ても完結感がある。

 

『危険なプロット』


宿題として提出された作文に心を奪われた国語教師は、件の作文を書いた生徒に続きを書くように促す。読み進めれば進めるほど虚実が入り雑じり、読み手の教師の生活にまで踏み込んでくる。

 

『バーニング 劇場版』


村上春樹原作の韓国映画。「ビニールハウスを焼くの趣味なんです」そう彼が告白したその次の日に彼女は消えた。「あると思いこむのは難しいけど、ないことを忘れることは容易い」。意味深に響く彼女の言葉。何が本当で何が虚構なのか、読み解いた先に、僕の慟哭がひびく。