カタ「る映画への」オモイ

毎月定期的に大阪で開催される映画を語る会の記録ページです。

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3月16日ワイルドバンチ開催会で語られた映画

『アノマリサ』

エターナル・サンシャイン』『マルコヴィッチの穴』脚本家チャーリー・カウフマン監督・脚本。ストップモーションアニメーションで自分以外すべての、大人も子どもも男も女も関係なく、同じ声、同じ顔に見える中年男性が「皆とは違う女性」と出会う話。人間生理を逆撫でするストーリーと登場人物たちが作り物(人形アニメ)であることが相乗効果を生んでいる。90分に纏まっているのも魅力。

 

『カフェ・オ・レ』

マチュー・カソヴィッツの長編デビュー作、異人種間の三角関係を軽いタッチで描くラヴ・コメディ。マチュー・カソヴィッツ演じる貧乏なユダヤ人は黒人女子学生と付き合っている。しかし彼女にはもうひとり黒人のエリートの恋人がいた。そして彼女の妊娠が発覚、どちらの子どもなのかわからないまま協力して生活することに。複数の宗教、人種がまじりあうフランスをまさに映像で歯切れよく語っている。

 

ジュラシックワールド』『ジュラシック・ワールド / 炎の王国』『キングコング: 髑髏島の巨神』

恐竜映画にはロストワールドものというジャンルがある。例えば人類の未知の場所へ乗り込む『キングコング: 髑髏島の巨神』がそうだ。その中でも『ジュラシック・パーク』シリーズは人類の手でロストワールドを作るという点が特筆すべき点だろう。『ジュラシック・ワールド』シリーズの挑戦はさらに一歩進んでいる。恐竜映画から怪獣映画への移行だ。『ジュラシックワールド』は人間社会から隔離された恐竜のテリトリーを人間が生みだす恐竜映画である。『ジュラシック・ワールド / 炎の王国』は、恐竜が人間社会にとって排除(駆除)すべき怪獣になる過程の半怪獣映画である。

 

『南部の唄』

ディズニーパークのアトラクション、スプラッシュ・マウンテンのモデルとなった映画。南部の農場主へやってきた白人少年が、農場の下働きの黒人のオジさんのおとぎ話を聞く実写パートと、ブレア・ラビットが意地悪なブレア・フォックスたちを知恵でやり込めるアニメーションパートの融合。ウサギが意地悪なキツネをやり込める構造は『ズートピア』と対をなすのではなどの指摘あり。白人と黒人が交流をするのはこの作品当時の時代背景から考えてありえず、間違った歴史認識を与える可能性があるとの理由から現在は廃盤。

 

『王国(あるいはその家について)』


この映画は、リハーサルの場面を使いフィクションを形成している特異な映画だ。この映画の目的は「役者が役になる過程をカメラに収めること」である。リハーサルの、台本の読み合わせを繰り返す過程、役者のからだに言葉が入り、声ができあがり、登場人物同士の関係性ができる過程で物語を語る。役者のちょっとした言葉のニュアンスや衣装、位置関係が、試行錯誤ゆえに揺らぐ。すると本来語られるべき物語とは別の可能性を立ち上がりそうになる。まったく新しい種類のサスペンスを持った映画。